2009年5月30日土曜日

人間は万物の霊長か?

2つの原体験
 わたしは10歳のとき、ある日突然、あることをきっかけに、「なぜ、この世の中には貧しい人びとがいるのだろうか。こんな世の中は絶対に間違っている」という思いに強く打たれました。そして、14歳のときに修学旅行で、広島の原爆記念館を見学しました。そこに展示してある数々のものを見ている間ずっと、体が震えてしかたがありませんでした。それは恐怖や怒りではなく、ただただ、「人間はなんて馬鹿なんだ。こんな世の中は絶対に間違っている」という強い思いだけでした。

 この二つの原体験の記憶は、その後もずっとわたしのこころの奥にあり続けました。そして、22歳のとき、この提唱の原案者である和田重正氏の「みんなで国に理想を」という小冊子に出会いました。それを読んで、「これこそ、人びとが幸せになり、それぞれの国も、世界も救われる確かな道だ」と確信しました。こどものときから、ずっと持ち続けていた疑問に対する答えが見つかったのです。本当にこころの底から感動しました。

 そして、この考えを世界中の人びとに伝えていくことが、自分の使命だと思ったのです。それが、約40年の思索と実践を経て、『国の理想と憲法――国際環境平和国家への道』、そして、その英語版の『BEYOND NATIONAL EGOISM(国家エゴイズムを超えて)』として結実したというわけです。 

無限のいのちのリレーを経て
 140億年の宇宙の歴史の中で、この地球上に35億年前に最初の原始的単細胞生物が誕生し、そこから生物の進化の歴史が始まりました。その後も、次々に進化が起こり、さまざまな植物や動物が誕生しました。300万年ほど前に最初の人類である猿人が誕生し、人類進化の歴史が始まりました。そして、4万年ほど前に、現生人類が生まれ、今日のわたしたち=現代人に至っています。

 35億年前に地球に誕生した最初の生物から、今日のわたしたち一人ひとりに至るまで、無限とも言える世代を経て、「いのち」が一つの世代から次の世代へとバトンのようにリレーされてきました。もし、「いのちの鎖」の輪の一つでも切れていれば、あなたも、わたしも、この世には存在していないということになります。そういう事実からも、一人一人、また、すべての生物の生命は、かえがいのないもの、と言うことができるでしょう。

 また、そういう意味で、わたしたち一人一人、そして、地球上のすべての生物は、生物の歴史の最先端に立っている、と言ってもよいのです。
よく、「人間は万物の霊長である」と言われます。人間は動物の中でもっとも優れた存在である、という意味なのでしょう。確かに、人間は他の動物にはない発達した大脳を駆使して、輝かしい科学技術文明と物質文明を発達させてきました。その結果、人類は他の動物を圧倒して、この地球上で繁栄を謳歌しています。

人間は狂ったサル?
 ところが、その人類が、少なくとも有史以来今日まで、絶えず同じ人類同士で大規模な殺戮を繰り返しています。そして、同じ人類同士で差別や虐待をしています。そして、いまや、自分たちの食べ物や飲み水に毒を入れ、吸う空気を汚染し、そして、自分たちの生きている世界そのものを、破壊しようとしています。このような世の中で、多くの人びとが個人的にも社会的にも、不安を抱え、苦しみながら生きています。こんな世の中は絶対に間違っています。これでは、とても「人類は万物の霊長である」とは言えません。では、人間は「狂ったサル」なのでしょうか。

必ず平和は実現できる
 本来、人間はそんなに愚かしく無力な存在なのでしょうか。わたしは、そうは思いません。人間は数々の過ちを犯し、自他を苦しめてきました。しかし、自分たちで犯した間違いは、必ず自分たちの力で解決できるはずです。わたしたちは、自分自身の心の幸福と安らぎを得ることは勿論、わたしたち人間自身によって、諸々の社会的問題を解決し、世界の平和と人類の幸福を必ず実現できるのです。

 今日までそれが実現しなかったのは、無関心と無知と、そして何よりも、諦めにあったのではないでしょうか。「必ず実現できる」という信念を持って、間違いの根本原因を究明すれば、必ず解決への道を見付けることができる、とわたしは確信しています。そのとき初めて、「人間は万物の霊長である」と呼ばれるにふさわしい存在になるのではないでしょうか。

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2009年5月12日火曜日

開悟の大切さについて                  (ある講演のレジメ)

 私たちにとって「開悟の大切さ」ほど大切なものはない。なぜなら、生きているのは自分自身であるからである。その当の自分が何者であるのか、自分の生きるこの世界が何であるのかを本当には知らずに生きることは、自分の思いや気分で生きているにすぎない。

 本当に自分を知らず、本当に人生を知らず、本当の生き方をしないことほど愚かなことはなく、実に惜しい一生である。ましてや、人類社会がこのように急速に行き詰まりに向かっている現代、私たちはあらためて本当の自分、本当の世界をアタマでなく、はっきり体験的に捉えることが何よりも重要である。

 釈尊はすでに2500年前に大悟され、諸々の人間の苦しみ、社会の混乱の元は無明であり、存在の絶対的真実は不可分一体である、と喝破されている。

 では、無明とは何か?私たちは通常、物事をアタマによって認識・判断・思考する。しかし、アタマによる「思い」は相対的なものであり、自と他を別け、物事をバラバラの存在と誤って認識する。

 したがって、思いによって認識した事実は、所詮自分の都合で解釈した「事実まがい」でしかなく、「ありのままの事実」ではない。また、思いによって認識する「自分」は、所詮「他とのカネアイ」で自分で勝手に規定している自分でしかなく、真実の自己そのものではない。思いによっては、真実の自己、不可分一体という存在の絶対的真実は捉えることができないのである。

 存在の絶対的真実をアタマでなく直接的に捉えるためには、まず第一に、それを何が何でも体験的に捉えるのだという強い意欲が必要である。同時に、正しい瞑想や坐禅によってアタマの思いを鎮めることが肝要である。

 とは言っても、私たちの思いの壁は非常に厚く、真実を直接的に捉えることはなかなか難しいことも事実である。体験的に言えば、アタマではどうにもならない問題にぶつかり、もがきにもがいて、とことん行き詰った絶体絶命の状態において、突然アタマ(思い)を超えた意識が働き、不可分一体の存在の絶対的真実が直接的に捉えられるのである。

 私の主宰する「自覚のセミナー」も、このような原理に基づいているが、これまでも1週間という短期間で多くの参加者が真実の自己と真実の世界に目覚めている。

 いずれにしても、私たちはあらためて「生活する自分」だけでなく、「存在する自分」とは何か、ということを第一のテーマとしなければならないと思う。

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ワクワクするような国創りを目指して

ワクワクするような国創りを目指して、みんなで日本に理想をかかげよう
                   (ある講演のレジメ)
 
 現在の日本は、政治、経済、教育、福祉など深刻な行き詰りを見せています。また世界的にも、環境破壊や戦争などにより、人類社会は未曾有の危機に瀕しています。この危機を根本的に乗り越えるためには、これまでとはまったく異なる流れを創りださなければなりません。私は、その鍵が現行日本国憲法にあると考えています。

日本を含め、人類社会のかつてない行き詰まりの元凶は「自分の国さえよければ}という国家エゴイズムの対立にあります。この国家エゴイズムの対立が戦争を生み出し、科学技術を発展させ、企業間の競争を促進し、環境問題や貧困、飢餓などの問題を生み出してきました。

 現行日本国憲法は、前文において、日本は平和的な手段によって、世界の深刻な諸問題の解決に全力で貢献する。そうすることにより国の存立を図る、ということが高らかに宣言されています。これは、国家エゴイズムを自ら一方的に放棄するということです。そして、9条において、軍備の撤廃と自衛のための戦争を含めて、いかなる戦争をも放棄することを唱っています。

 私は一昨年、『国の理想と憲法―国際環境平和国家への道』という本を出版いたしました。その中で次のように提案しています。

「私たちは、行き詰った世界の中で、日本を真に再生し、世界の危機を根本的に乗り越えるさきがけとなるために、現行日本国憲法の平和精神をより積極的に活かし、日本に新たな「国際環境平和国家を目指す」という理想を掲げましょう。」

 日本ではここ数年、政治の混迷と、かつてない不況に陥っています。この間、憲法改正問題はどこかへ行ってしまったような雰囲気が漂っています。しかしながら、2010年5月18日には国民投票法を施行されることを考えると、いずれ再び憲法改正への動きが活発になることが予想されます。今、こういう時期だからこそ、私たちは真剣に考えていかなければならないと思います。

『国の理想と憲法ーー国際環境平和国家への道』
野村昇平著・七つ森書館出版

目次

Ⅰ 日本の将来を決める憲法問題
 第1章 武力がなくて平和は守れるか
 第2章 憲法改正の賛成・反対論
Ⅱ 地球環境と人類社会の今を知る
第1章 環境問題の実態を知る
 第2章 人口・食糧・水・エネルギー・原発の問題
 第3章 21世紀の紛争と戦争を考える
Ⅲ この危機をどう乗り越えるか
 第1章 行き詰まりの根本原因は何か
 第2章 この国の未来を考えるために
 第3章 国家エゴイズムを超えて
提唱 みんなで国に理想を掲げよう

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